薩摩という土地の美味を伝える:風月堂

2008年12月19日 カテゴリー: 鹿児島県

薩摩という土地の美味を伝える:風月堂

今年、日本中を沸かした大河ドラマと言えば、『篤姫』です。そして、同ドラマの主人公である篤姫が活躍した舞台といえば、江戸時代末期の薩摩藩。そんな動乱の時代に薩摩の地で生を受けたものがあります。それが「サブレ」です。今回、訪れたのは、さつまどりサブレを製造販売する風月堂。お菓子職人なら誰もが一度は手にしたい全国菓子大博覧会での名誉総裁賞も見事に受賞しています。

鹿児島県鹿児島市上福元町にある風月堂

全国にある風月堂の正体

風月堂は全国に散らばって見られるお菓子屋さんです。元をたどれば、その起源は1747年江戸・京橋に端を発します。その当時の名称は、凮月堂。これが、いわば風月堂総本店だったわけです。ここから、のれん分けを繰り返して、上野、神戸、甲府など、日本全国さまざまな土地に風月堂のお菓子は広がっていったわけです。鹿児島市福元町にある風月堂もそのひとつ。同店創業者は、東京風月堂に勉強に行き、そこで学んだ技術を生まれ故郷である薩摩へと持ち帰ってきたことになります。ただ現在は、すでに独り立ちを果たしており、まったくのオリジナル商品をつくっています。そして注目したいのが、同店お菓子のラインナップ。彼らの薩摩ならではのお菓子は、その菓子の美味を堪能できるだけではなく、土地土地の産品をも紹介しているのです。

いくつか種類のあるさつまどりサブレの中でお薦めは、紫芋の味!

なかなか堂々として素敵な理念「薩摩の心、太陽の味」

土地を色濃く映した「さつまどりサブレ」

薩摩という土地の味を知りたい人にお薦めなのが、風月堂のさつまどりサブレを買うことです。どうしてかと言えば、これを買い求めるだけで薩摩のいくつかの味を楽しむことができるからです。プレーン、しお、ゴマ、知覧茶、黒酢黒糖、紫芋。たとえば、王道となるプレーンを挙げてみても、製造に用いられる材料は、知覧産の卵、霧島産バター、垂水の天然水と県内で選び抜かれた良質な原料ばかり。言うまでもなく、その他多種のサブレも、あくまでも薩摩=鹿児島県という一本の軸に沿ってつくられたものです。「私たちは、地元で四季折々一番旬なもの使って、お菓子づくりをしていきたいと願っているんです。幸いにしてウチは工場長が原料に詳しくこだわりがあるものですから、相談しながら商品を開発しています」、そう語るのは、同社の馬場甚史郎社長です。

鳩サブレより古い薩摩のサブレ?

馬場社長は薩摩に対しての熱い想いを持つ人物です。ですから、お菓子づくりにおける原料選びにも、相当な熱が入るというわけです。そして、彼の情熱は源泉素材だけにはとどまりません。彼は薩摩という土地と焼き菓子の歴史を調べていったのです。すると、そこには意外な事実が浮かび上がりました。「これは長い間、私たちも知らないでつくり続けていたのですが、実はサブレがはじめてつくられた土地というのは、ここ薩摩だったんです」(馬場社長)。この事実は文献にも残されており、さらには西郷隆盛の子孫からも同じ事実を「サブレは、西郷大将(西郷隆盛のこと)が薩摩藩の兵糧パンとしてつくらせたものです」と告げられたそうです。

テキパキと働く作業員は、職人でもある。

立ち上る湯気とともに、工場の中には活気があふれていました。

鳩サブレより古い薩摩のサブレ?

尊王攘夷の声が高まり、乱世の様相を呈していた時代においては、幕府も水戸藩も長州藩も、そして薩摩藩も、携帯性と保存性の高い兵糧パンを競ってつくって研究していたのです。そして、戊辰戦争のとき、5000人分の兵糧パン、つまりサブレ製造の依頼を受けたのが東京の凮月堂だったわけです。このとき、サブレ製造方法は薩摩藩から伝授されたものだそう。つまり、明治生まれで知られる有名な豊島屋の鳩サブレよりも、もっと前に薩摩にサブレのレシピがあったということになるわけですね。「いろいろ調べてみると、日本の焼き菓子歴史のルーツというのは、どうも薩摩の地にあることがわかってくる。だから、私たちはそのことを伝えていかなければいけない、そう思っているんです」(馬場社長)。

さつまどりサブレ

どうして鳥のカタチをしているの?

ところで、どうして「さつまどりサブレ」は鳥の形をしているのでしょう? 実はそこにも薩摩藩の志、薩摩スピリットとも呼べるものが込められているのです。薩摩という土地には昔から闘鶏と呼ばれ、鶏の脚に剣をつけて戦わせる風習があります。そして、そのときの薩摩鳥の戦い方というのが、常に前に向かっていって後ろに引かないというものでした。そんな戦い方に自らを照らしていたのが薩摩藩なのでしょう。いわゆる薩摩の藩士たちというのは、非常に高いプライドを胸に戦いに挑んでいたと言います。そんな崇高なスピリットを受け継ごうと考案されたのがさつまどりサブレの形だったわけです。

サクサクとした新しい食感!

そんな奥深い歴史を持つサブレですが、サブレと言えばバターの風味が漂い、サックリとした食感が印象的です。風月堂のさつまサブレでは、それぞれの味にそれぞれの特徴があるのはもちろんですが、何よりもサクサク感が際立ちます。そして素朴ながらはっきりとした素材の味が舌に踊るので、数枚食べても飽きがこないのです。「一から十まで原料にこだわり、過去の歴史も踏まえた上で、お菓子の製造に取り組むと、職人さんたちもやる気が違うんですよ」(馬場社長)。

梅の形をしています。

薩摩西郷梅ブランドをお菓子にした「薩摩西郷梅かるかん」

地域活性化の志

地域を活性化しようという高い意識を持って、取り組む彼らの姿には、薩摩藩士の勇姿が想い浮かびます。そんな彼らには拍手を送りつつも、やはり気になるのは、この美味なる菓子。鹿児島市にある風月堂、なかなかあなどれない存在です。他にも、薩摩西郷梅ブランドをお菓子として、形にした「薩摩西郷梅かるかん」など、お店をのぞくと郷土の味わいがズラリと並んでいます。鹿児島に行く機会があったら、是非、風月堂のお菓子をチェックしてみてくださいね。

取材/鈴木隆文

薩摩藩士のスピリットを継ぐ同社の勇士。左から、二本柳さん、馬場社長、米倉工場長。

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